「催情記」☆目もとの事
☆目もとの事
すげなくきつきはなき者也
いかにもいかにもしほらしく御わらひ有べし
とかくとかくぶしつけものはしほらしき目もと御むよううつくしき様は目本(めもと)御たしなみ(嗜み)かんやう(肝要)なり
うつくしきといふもしほらしきといふも人のほるる(惚るる)はめもとにてこそ候へ
とかくとかく御たしなみかんようかんよう
「催情記」☆ふりたしなみの事
☆ふりたしなみの事
大名の小姓高家などにほうこう(奉公)するは朝夕たしなみ手なるる(手慣るる)により見事な者也
さなきものもなをせばすこしはなをるもの也とかくふりなどをせんにたしなむ(嗜む)べしあまり身にじまんすれば又みぐるしきものなり
「催情記」☆いんろう(印籠)の事きんちやく(巾着)の事
☆いんろう(印籠)の事きんちやく(巾着)の事
おさなき(幼き)は凡きんちやく(巾着)いんろう(印籠)はすきずきけつようながよし
又年たけてはからかわ(唐革:金唐革)のちとふるひ(古ひ)が吉
「催情記」☆楊枝の事
☆楊枝の事
いかにもきれいにして二本づつたしなむべし
一本はふさをかみ(噛み)ふだん(普段?不断?)つかうべし
一本はそのままたしなむべし
いらぬと思へ共ふと入ことあり
つねの心がけばんじ(万事)肝要の事也
返々やうじ(楊枝)のよごれ(汚れ)をばむさき(汚れてきたならしい)ものなり
さいさいとりかゆ(取り替ゆ)べし
「催情記」☆にほひぶくろの事
☆にほひぶくろの事
だて(伊達)なも吉
又たけたも吉じやかうすぎぬやうにあわせやう口傳あり
さてかがみ(鏡)をふところへ入べしなるほどうすきたけはものずき次第小ぐし(小櫛)をも入べしかがみなどは用心のためにもよく候
又むらさきのふくさ物も一つたしなむべし
主人の刀わきざしなどもつ(持つ)ときのため也
万事さやうに御心持肝要也
「催情記」☆手ぬぐひの事
☆手ぬぐひの事
かねきん(金巾)のいかにも手のよきを一つ
又さらし(晒木綿)のちいさきを二つほど持べし
一つはあせぬぐい(汗拭い)一つはつかひやう(使い用)今一つかねきんはしぜんは主人へまいらするため也
「催情記」☆はながみの事
☆はながみの事
きれいなしろき上にも猶しろきがよく候おりやう(折り様)は面々のだてすきしだい(次第)
あまりおほく(多く)いるれば村山かもんがかふき(歌舞伎)の時出るやうにて見くるし(見苦し)
又すくなきも庄屋の一ばん子がまつりきやく人に行時のやうで見くるしきもの也
とかくとかくかげん(加減)有べき者也