「催情記」☆ちやの事

☆ちやの事

 

御若衆様はかならず上座へしやうずる(招ずる?請ずる?)物也

かたくじぎ(辞儀)なされ候へば見たもなひものじやたとへくげてん上人(公家殿上人)ありといふとも上人なをし候べく候

もとより御ちや(茶)のときもさきへまいり候がよく候

さてつぎへ御まはし候てはながみ(鼻紙)にて御口を御のごひなさるべく候

御のみ(飲み)なされ候とき御ひたいかみ(額髪)に御気をつけなさるべく候おなじくねんじ候ときかならず御ひたいかみ(額髪)ちやわん(茶碗)のうちへ入茶つき候へばみくるし(見苦し)

其時はつと思ひなであぐれば数奇屋うちへ茶ちりもみちのかほ(紅葉の顔)にならせられ候をわきよりみれば笑止なものじや

又あまりすきしりかほ(数寄知り顔?)もみともなひ(みっともない)すしぢやと人がいふ

又茶をたんとは御無用かの所かひゆる(冷ゆる)と申候