「催情記」☆さかづきの事
☆さかづきの事
さけ(酒)はのまぬ(飲まぬ)がよし
むり(無理)にしゐる(強ゐる)共あなたこなたと御申候て□はづしなかるべく候
そうべつわか衆は下戸がよし(良し)たとひ上戸なりともけこがほ(下戸顔?)しかるべく候
上ごはきらふ事也
なにとしても一義ののちわれながらきひそあしかるべき
又ほうはい(朋輩)よりあひ(寄合ひ)月見花見あるひはゆさんけんぶつ(遊山見物)にちいん(知音)まじり□候ともめもと(目元)やらぬやうに
とかく人のあくめ(悪目)酒ならでは見えぬものじや
また人おほく(多く)あるざしき(座敷)にてしうしん(執心)なるもの二人あらばどれへも(杯を)ささぬがよし
ひかへていればわきよりすしめがそんぜうそれに御さし候へといふ物なり
其時なにとなくをつとこたへてさすべし
ただし二人のうちにこひうすひ(濃ひ薄ひ)あるならばこひ方へさすべしそのときかの一人のものわかしゆにはえつらいてのふだもの(飲ふだ者)にくしにくしと思ふにより出入あるものなりその心得まへかどよりかんよう(肝要)なり
又あぢあるさしき(座敷)ならばちいんの方へばかりさすべし
ときどきはつけざし(付差し)もよし
これはぜひなき時也虎と十衆?これ也